ブラティスラヴァ世界絵本原画展 BIBで出会う絵本のいま

「ブラティスラヴァ世界絵本原画展 BIBで出会う絵本のいま」に行ってきました


現在、奈良県立美術館で開催中の「ブラティスラヴァ世界絵本原画展(略称 BIB= Biennial of Illustrations Bratislava)」は、 スロヴァキア共和国の首都・ブラティスラヴァで1967年から2年ごとに開催されている世界最大規模の絵本原画展です。
出版された絵本の原画を審査対象としていて、世界各国で選ばれた絵本が集まる絵本のオリンピックのような大会です。
出版された本が対象というところが、日本で馴染みのある「ボローニャ国際絵本原画展」と大きく違う点です。

BIB 2017の受賞作品、荒井真紀氏の『たんぽぽ』(金のりんご賞)、ミロコマチコ氏の『けもののにおいがしてきたぞ』(金牌)の原画とそのラフスケッチを間近に見てきました。
また11月18日(日)に開催された絵本セミナー「BIBと絵本制作の舞台裏」も聴講してきました。

ブラティスラヴァ世界絵本原画展 BIBで出会う絵本のいま

(ブラティスラヴァ世界絵本原画展案内チラシより)

イントロダクション「BIBと日本の絵本」

講師:広松由希子氏(絵本評論家BIB2017国際審査委員長)

今回BIBの審査委員長を務めた広松氏の講演では、BIBの概要、歴代の受賞作品、審査のプロセスなどが紹介されました。

講演「わたしの絵本創作過程」

講師:こしだミカ氏(絵本作家)

続いてこしだミカ氏の講演では、今回出品された「でんきのビリビリ」が311の原発事故をきっかけに生み出されたという背景や、スケッチから完成に至るまでのエピソードが紹介されました。
その他、色々な出版社に自ら原稿を持ち込んでは断られを繰り返したのちに産み出された作品の紹介もありました。
こしださんの独特の大阪的なユーモア溢れるお話に、会場は終止笑いに包まれていました。
巡回する本展で、こしだミカさんのラフスケッチが展示されているのは奈良県立美術館のみですので、ファンの方はお見逃しなく!

ブラティスラヴァ世界絵本原画展 BIBで出会う絵本のいま

(ブラティスラヴァ世界絵本原画展案内チラシより)

講演「これまでに見たことのない絵本を創るために」

講師:筒井大介氏(野分編集室)

今回の展覧会ポスターでもメイングラフィックに使われている「ネコヅメのよる」(町田尚子)の担当編集者でもある筒井氏からは、編集者の立場からみた絵本制作について、「ネコヅメのよる」(町田尚子)「えとえとがっせん」(石黒亜矢子)を例に作品が生まれたプロセスや、ラフスケッチから完成に至るまでの紹介がありました。
ネコヅメのよる」はスロバキアの会場でも現地の子供達に大人気だったそうです。
えとえとがっせん」は十二類絵巻をベースに現代に描かれた絵本で、少年マンガを通った人なら誰もが楽しめる現代のマンガの要素が沢山散りばめられた作品です。
十二類絵巻とは、室町時代に描かれた御伽草子類絵巻で、十二支の鳥獣たちから和歌の会でいじめられたタヌキが、キツネ、クマ、カラスらの仲間と組んで夜討ちをかけるというお話です。

ブラティスラヴァ世界絵本原画展 BIBで出会う絵本のいま

「ネコヅメのよる」(町田尚子)(ブラティスラヴァ世界絵本原画展案内チラシより)

絵本を作ることについて

絵の好きな人が絵本を描きたいと思う、という出発点で、そのアイデアが「何が面白いのか」「何がしたいのか」ということをはっきりさせないままストーリーを作り始めてしまうと必ず失敗する、という指摘が編集者らしく印象的でした。

311以降の絵本、という捉え方をしているという話も興味深く、東日本大震災を直接体験した人でなくても強いショックから見えない傷を負っていて、そのひとつの現れとして、2013年頃から、強い絵、怖い絵、生命力に溢れた絵の絵本が多く出てくるようになったように感じるそうです。

ネコヅメのよる」の表紙も、言われてみると確かに、今までの絵本にはなかった怪しい怖さが漂っている気がします。
実際この絵本は、東日本大震災で飯館村に取り残されたペットの餌やりのボランティアに参加した作者の体験から生まれたという背景があるそうです。

絵本が生まれる背景には、美しい絵を描くことだけでない多くの人々の関わりや営みがあって、もし絵本を描きたいと思うなら、遠回りをしてもいいから、絵が生まれる背景となる色々な経験をすることも大切だと感じました。

展覧会情報

ブラティスラヴァ世界絵本原画展 BIBで出会う絵本のいま

奈良県立美術館
2018年10月6日(土)~12月2日(日)

講師プロフィール

ひろまつゆきこ

編集者、赤ちゃん文庫主宰、ちひろ美術館学芸部長などを経て、現在フリーランスで、絵本の文、評論、翻訳、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。2012-15年ブックスタート選考委員。2010年ボローニャ展、2013年、2015年BIB国際審査員。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、『おめでとう』(講談社)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『はしれ、トト!』(日本絵本賞翻訳絵本賞、いずれも文化出版局)など。WEB「kodomoe」、月刊誌「MOE」などで、新刊絵本の選評を連載中。
自由大学 プロフィールより)

こしだミカ

絵本作家・造形作家。BIB 2017 に『でんきのビリビリ』(そうえん社 2015 年)で入選。デビュー作『アリのさんぽ』(架空社 2005 年)、『ほなまた』(農文協 2008 年 BIB 2009 入選)、『ねぬ』(架空社 2014 年)、『ドンのくち』(佼成出版社 2016 年)、『カイロ団長』(宮沢賢治文 ミキハウス 2015 年)などの作品がある。また、こども番組「できたできたできた」(NHK E テレ)(がっこう編・かてい編・からだ編 2010 年 4 月~ 2016 年 3 月放送)の背景画とオブジェを制作している。
ブラティスラヴァ世界絵本原画展案内チラシより)

筒井 大介(野分編集室)

絵本編集者。ミロコマチコ『オレときいろ』(小学館 2014 年 BIB 2015 金のりんご賞)、スズキコージ『ブラッキンダー』(イーストプレス 2008 年)、荒井良二『うちゅうたまご』(イーストプレス 2009 年 BIB 2011 入選)、町田尚子『ネコヅメのよる』(WAVE 出版 2016 年 BIB 2017 入選)、石黒亜矢子『えとえとがっせん』(WAVE 出版 2006 年 BIB 2017 入選)などの編集を行っている。水曜えほん塾、nowaki 絵本ワークショップ主宰。
ブラティスラヴァ世界絵本原画展案内チラシより)


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