AND softdevice プロトタイピングのすがた
ゼミの活動 デジタルものづくり

「AND softdevice プロトタイピングのすがた」に行ってきました


京都北山にある株式会社softdevice(以下softdevice)に2018年4月にオープンしたLABスペースで開催された「プロトタイピングのすがた」で、softdevice代表八田晃氏、1-10drive CTO森岡東洋志氏、IAMAS小林茂教授のお話を聴いてきました。

AND softdevice #001 プロトタイピングのすがた@京都

softdeviceは、80年代後半から家電や携帯電話のGUIの先行開発を中心に発展してきた会社で、通常プロトタイプを作るのは製品開発のプロセスの一部であるのに対し、softdeviceはプロトタイプを作ることが全仕事であったりもするのが特徴だそうです。

90年代は家電の操作画面内のGUIなどのプロトタイプデザインが多かったそうですが、2003年頃からは加速度センサ等を使ったフィジカルな操作をのものが増えはじめ、近年は、人の行動を含んだものなど単なるプロダクトの範囲を超えてプロトタイプの幅が広がっていることで、プロトタイプの表現がどんどんリッチになってきているそうです。

AND softdevice プロトタイピングのすがた

ハードウェアスケッチで素早く体験する。

八田氏のプレゼンテーションでは、これを軽量化する試みが紹介されました。
例えば開発の軽量化を可能にしているのが、Arduinoなどの小型のマイコンボードです。
大掛かりな開発をしなくても、こういったボードを使って、素早くおおよそのことを体験させることが可能になりました。(=ハードウェアスケッチという言葉で説明されていました。)

また、それらのサービスを利用する場面を再現するために、実寸大の部屋や装置をプロジェクションして、実物大で検討することによって、一人のデザイナーによる制作ではなく、同時に多くの制作者が関わってその場でどんどん変えていけるプロトタイピングを行っているそうです。

今回の会場であるLABは、これを可能にするため可動式の壁兼スクリーンを使って作業できるスペースになっていました。

AND softdevice プロトタイピングのすがた

スケッチしながらアイデアをコンセプトへ。

IAMASの小林教授のプレゼンテーションでは、大垣の枡メーカーと共同開発したプロダクトの制作プロセスについて、誰でも描ける絵をみんなで描いてブラッシュアップしていくことで、「作りたい」「実現させたい」というマインドとチームをつくりあげていく実例が紹介されました。

『光枡』でお酒のシーンに彩りを。LEDで光る枡で楽しくお酒を飲もう!

木を光らせたら絶対に綺麗!これで飲んでいたら俺だけモテル!?
『光枡』(HIKARIMASU)はそんな中年オヤジの遊び心から生まれた商品です。
チームは2013年9月、岐阜県大垣市にある大学院大学IAMAS主催の新商品開発を目指すアイデアソン・ハッカソンで結成。枡をどうしても光らせたいチームメンバーのオヤジが、ある日突然アイデアスケッチだけでは伝わらないと、自宅で枡を改造し、試作品を持ってきたのが始まり。(Makuake「光枡プロジェクト」より)

プロトタイピングはこれで正しいの?ということを問う作業。

小林教授の著書「アイデアスケッチ-アイデアを熟成させるためのワークショップ実践ガイド」の、絵の上手い下手に関わらず、誰でも描ける方法でスケッチを描くことで、アイデアを共有しブラッシュアップしていく方法も紹介されました。

スケッチは問い、プロトタイプは答え。

小林教授のお話の中で、Microsoft Researchの主任研究員Bill Buxtonの著書『Sketching User Experiences』に書かれたスケッチとプロトタイプの役割を明確にすることについて紹介がありました。

確かに、開発の初期段階で素早くコストをかけずにアイデアを試すことができれば、たとえ失敗してもダメージは少ないですが、開発段階が進んでから失敗すると戻るのが大変ですよね。

サイクロン式掃除機で有名なダイソンの創業者ジェームズ・ダイソン氏は次のように述べています。

いつでも失敗していいのです。そこから学べるわけですから。もし、自分自身で試作機を作り、それがうまくいかないことを自分で目撃すれば、どうすればうまくいくかひらめきます。
しかし、もしあなたが自分のアイデアをほかの専門家にテストしてもらい、結果だけ渡してもらうようにしたら、あなたは決して、そのアイデアを実現することはできないでしょう。1億円を借りれば、「ダイソン」を作れる ジェームズ・ダイソン氏が若手社会人や学生と対話|日経ビジネスONLINE

会場では、トークの内容をその場でどんどんヴィジュアル化していく「グラフィックレコーディング」も行われていました。

AND softdevice プロトタイピングのすがた

どんな脈絡でどんな話があったのか、絵巻物を見るように振り返ることができて、話の内容をはっきりと理解することができます。
新しい意見を引き出すために、会場の意見や目線を素早く可視化して共有するということは、ある意味これもひとつのプロトタイピングなのかな、と思いました。