「Kana Hunting」で見つける京都のカタカナ – 第38回留学生展レポート
京都市立芸術大学で開催中の第38回留学生展(2025年7月14日~18日)を訪れました。会場はB棟1階の交流室2(B-116)。
フランス・イタリア・ノルウェーからの交換留学生3名による作品展示が行われています。
なかでもひときわ印象に残ったのが、イタリア出身の大学院生メルロッティ・リッカルドさん(ミラノ工科大学より来日)のプロジェクト「Kana Hunting」でした。


京都の街角から集めた「のら文字」カタカナ
「Kana Hunting」はその名のとおり、京都の街中に潜む“カナ文字”を「狩る」ように集めていくユニークな試みです。
制作のきっかけとなったのは、日本の看板文字文化を記録・分析する「のらもじ発見プロジェクト」や、路上のタイポグラフィを観察する書籍『タイポさんぽ』。いずれも、日常に埋もれた個性的な文字に光を当てる活動で、リッカルドさんの視点と共鳴しています。
のらもじ発見プロジェクト
町でみかけるユニークな文字たちを次々とデジタルフォントにしちゃうプロジェクト。
noramoji.jp
「のらもじ発見プロジェクト」は、昭和期の手描き看板などに見られる個性豊かな文字(彼らはそれを“のらもじ”と呼ぶ)を収集・分析し、フォントとして再構成する活動です。
一方『タイポさんぽ』(藤本健太郎著)は、日本各地の街中で見つけた味のある路上文字を、ユーモアを交えて紹介したタイポグラフィ観察の名著。どちらも、機械では生まれない“人の手による文字”の魅力に着目しています。

リッカルドさんもまた、同じまなざしで京都の街を歩き回り、商店の古びた看板や昭和レトロなタイポを撮影。これまでに収集したカタカナはなんと645種類にものぼるそうです。
そして、それらの中から選んだ文字の形状をもとに、新たなカタカナフォントをデザインしています。都市に散在する無名の文字たちが、彼の手で丁寧に再解釈され、新たな命を与えられているのです。
手描きスケッチから生まれるフォント
注目すべきは、その制作プロセス。多くのフォント制作がAIやデジタルツールに依存するなか、リッカルドさんはすべての文字をまず手描きでスケッチしています。

いきなりPCでトレースするのではなく、紙とペンで一文字ずつラフを描き、そこからフォントデザインへとつなげていくオーソドックスな作業をしているそうですが、本人によれば「50音すべてをおよそ1時間で描けるし、その方が細部にもこだわれる」とのことで、驚くべき速さと集中力で、精度の高いスケッチを仕上げていました。
実際、彼のスケッチは即興的でありながら洗練されており、造形の観察眼と分析力が随所に感じられます。
カタカナの構造にアルファベットのエッセンスを取り込んだようなデザインもあり、「どこか奇妙だけれど、妙に説得力がある」という不思議な魅力がありました。日本人には気づきにくい文字のクセやリズムを、異なる言語背景を持つ彼の視点で捉え直しているようにも感じます。
ツールや技術に頼りすぎることなく、手で考える姿勢が生きた文字を生む。彼のプロセスには、デジタル時代における表現のあり方を改めて考えさせられるものがありました。



