micro:bitの目指すコンピュータサイエンス教育

2020年から小学校でプログラミング教育が必修化へ。 micro:bitの目指すコンピュータサイエンス教育とは。 #microbit #mft2017


2017年8月5日6日に東京ビッグサイトで開催されたMakerFaireTokyo2017micro:bitが日本で初公開され、Microbit財団CEOのザック・シェルビー氏(Zack Shelby)によるプレゼンテーションが行われました。

micro:bitはイギリス国営放送BBCが中心になって次世代のデジタル教育のツールとして開発されたマイコンボードで、2015年に100万台がイギリスの小学校7年生を対象に無料配布されました。

2016年に多くの企業の協賛を得てNPOのMicrobit財団を立ち上げ、現在世界中で新しいプログラミング教育の試みがされています。既に40カ国で利用が始まっており、スリランカでは2,000人の子供たちに配布、また7ヶ月で25,000個を50カ国で配布したそうです。

未来ではすべての子供たちが発明家であることを目指す

ザック氏「現在ある様々な問題はICTやAIがいずれ解決してくれるだろうが、それが解決したらまた新しい未知の問題が生まれるだろう。これからの問題はデジタルスキルがなければ解決できない。micro:bitは、これからの子供たちがデジタルスキルを早くから学んでいくための支えとなるだろう。」

micro:bitの目指すコンピュータサイエンス教育

(1)Easy

子供は2分で使い方が分かり、教師は10分で教え方が分かる。

(2)Affordable

手ごろな価格であること。だってTシャツ1枚の値段!

(3)Non-profit

非営利であること。

ザック氏「小さいからといって入門だけの機能ではなく、加速度センサやBluetoothなど多くの機能を持っているので、少し工夫すれば、例えばe-Sportsのウェアラブルデバイスを作ることもできるだろう。
スクラッチをベースにしたブロックエディタで日本語版のエミュレータもあって分かりやすいし、MicroUSBで接続してプログラムを転送できる。ブロックエディタだけでなく、中学生くらいのレベルならC++やJavascriptでのプログラミングも可能だ。
サーボモータを動かすのもシンプル。あとはガムテープで固定したり、アルミ箔などでつないだりすればいいんだ。」

micro:bitの目指すコンピュータサイエンス教育

イギリスでは、micro:bitを使ったプログラミングの授業を受けた生徒のうち90%がコーディングについて理解できたという調査結果が得られたそうです。

また、イギリスでは現在、女性のSTEM(”Science, Technology, Engineering and Mathematics” すなわち科学・技術・工学・数学)関連の従事者は9%しかいないそうですが、micro:bitを使ったプログラミングの授業を受けた70%の女子生徒が将来の進路としてSTEMに興味を持ったそうです。

micro:bitの目指すコンピュータサイエンス教育

阿部先生によるscratchのデモンストレーション

デモンストレーションの後は、青山学院大学客員教授の阿部和広先生スイッチエデュケーション代表の小室氏を交えてディスカッションが行われました。

micro:bitの目指すコンピュータサイエンス教育

日本でも2020年から小学校でプログラミング教育が必修化へ

ザック氏「まず私たちは、2020年までに日本の300,000人の子供、保護者、教師の人たちに利用してもらうことを目標にしている。」

今年3月に公示された新学習指導要領には、小学校からプログラミング教育が盛り込まれました。

しかしプログラマーを養成するということではなく、問題解決のための論理的思考を体験的に学ぶための教育として取り入れられることになったようです。

リンク→新学習指導要領(平成29年3月公示)

リンク→教育の情報化の推進 プログラミング教育

文部科学省の新学習指導要領によると、子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力(=生きる力)を一層確実に育成するための一環として「プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考の育成のための学習活動を実施することとした」とあります。

文科省の定義する「プログラミング的思考」とは、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、ひとつひとつの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」というものです。

しかし、プログラミングの科目が新設されるということではなく、「学校においては特に,情報手段の基本的な操作の習得に関する学習活動及びプログラミングの体験を通して論理的思考力を身に付けるための学習活動を,カリキュラム・マネジメントにより各教科等の特質に応じて計画的に実施すること」とあるように、各科目の中で実施することとなるようです。

長年Scratchを用いたプログラミング教育を研究されている阿部先生からは「スクラッチを導入しただけでは教育は何も変わらない。教師のマインドを変えたり、新しいカリキュラムを開発する必要がある。」という話がありました。

これについてザック氏も「日本のプログラミング教育をどう進めていくかにあたって、専門家だけでなく、日本の現場の先生たちが一緒にカリキュラムを開発していくのが良いだろう」と語っていました。

新しいカリキュラムの開発が急務

スイッチエデュケーションの小室氏からの「プログラミング教育をどうやって保護者の方に受け入れてもらうかということも重要なのでは?」という質問に対して、阿部先生は「これから必要とされる問題解決の力は、今までのテストでは計れない。受験に縛られた教育を考え直す必要があるのではないか。学校を卒業するだけではこれからの社会を生き抜くのは難しく、コンピュータだけでなく、科学技術などあらゆるテクノロジーについての知識がとても重要。そういった面でも親を動機付ける必要がある。
しかし、今、大学で学生にコンピュータやアプリケーションなどのアイデアを形にするための道具を与えても「何を作れば良いんですか?」「何を作れば単位をもらえますか?」という質問が出てしまう。大学生になってから学び直しが必要に思う。こういう人間に育ってしまう教育を小学校から変えていく必要があるのでは。
」と語っていました。

ザック氏も「スマートフォンやタブレットは消費型のデバイス。ゲームをして遊ぶだけの”受身の楽しみ”は新しいものは生み出さない。どうやったら良くなるのか自分で考える、作る楽しみを覚えてほしい。micro:bitはタダのおもちゃじゃないんだ。」と語っていました。

micro:bitの目指すコンピュータサイエンス教育

具体的にどんな学びなのか、そのヒントになる例をザック氏と阿部先生から聞くことができました。

1つ目はザック氏から。ARMで9歳の子がmicro:bitに夢中になり、とうとう先生をトレーニングするセミナーを企画して実施したところ、30名の大人たちが参加してセミナーは大成功したというエピソード。

2つ目は阿部先生から。品川にある京陽小学校でGoogleが配布したRaspberryPiを導入したところ、当初は、準備をするだけで授業の時間がなくなってしまったり、様々なトラブルでうまくいかなかった。
しかし、機器の問題は先生に教えてもらうのではなく、クラスで飼っている金魚や亀の問題と同じ自分たちの問題として扱う、と考え方を変え、児童たちに全部自分たちで考えさせるようにしたところ、児童たちはどんどん自分で勉強するようになり、お互いに教えあうようになったというエピソード。

どちらも、これからの教育は今までの学校の枠の中では実現できないという予感がする面白いエピソードでした。

こちらはザック氏がプレゼンテーションの終わりにオマケとして上映した「小学校の先生がもしロボットになったら?」という動画です。

まずは、プログラミング教育を今までの科目のなかで実施するという日本では、どんなカリキュラムを作るかというのが大きな課題になりそうです。

国語、音楽、図工、理科、数学、それぞれの科目でプログラミングを活かしたワークショップが沢山生まれると楽しそうですね。


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