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ゼミの活動

秩序をつくるということ(対称性から学ぶ模様制作ワークショップ)


パターンのルールを体験する

Illustrator とコーディングによる模様制作ワークショップ

今回の出張授業では、「オリジナルの模様をつくる」というテーマのもと、前半は Adobe Illustrator、後半は p5.js を用いたコーディングによる模様制作を行った。一見すると異なるツールを用いた二つの制作だが、共通の軸は 「対称性(symmetry)」というルールである。

古代人にとっての秩序としてのパターン

導入では、縄文土器や古代の装身具に見られる文様を取り上げながら、「なぜ人は模様を繰り返し刻んできたのか」という問いを投げかけた。

自然界には存在しない高度な秩序が、混沌を制する力として象徴化される。
つまり、規則正しく反復される模様は、単なる装飾や自己表現ではなく、混沌とした自然環境の中で“秩序”を可視化する行為だったのではないか。

歴史の教科書などで、縄文時代のムラのイメージ画を見ると、竪穴式住居は広場を囲むようにして建てられ、その広場は綺麗に草が狩られて地面が剥き出しになっているように描かれているが、それはなぜだろう。
もしかして、掃除をすること、物を整然と並べること、そして身の回りに規則的なパターンを刻むことは、災いや病といった制御不能な力が入り込まないようにする結界やお守りのような意味を持っていたと考えられないだろうか。
そんな「秩序=人間の世界」という視点を共有した上で、制作に入った。

Illustratorで体験する対称性

制作実習では、図形ではなく、各自のイニシャルのアルファベット1文字を素材として用いた。
用いた対称性のルールは次の3つである。

  • 回転対称
  • 並進(平行移動)
  • 鏡映(反転)
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AdobeIllustratorを用いた実習の様子

文字を複製し、回転させ、移動させる。操作自体は単純だが、回数や角度を変えることで、文字は「読むもの」から「模様の構成要素」へと変化していくことを体験した。

コーディングでルールを数値化する

後半は p5.js を用いたコーディングによる制作に移行した。ここでは「プログラムを理解する」ことよりも、ルールを数値で決め、その結果を観察することを重視した。

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p5jsを用いた実習の様子

Illustrator ではマウス操作で行っていた回転・移動・複製を、角度、回数、距離といった数値として指定する。同じ「回転対称」という考え方でも、手段が変わることで「なぜこの形になるのか」がより意識されるようになる。

生徒たちは、数値を少し変えるだけで模様の印象が大きく変わることに驚きつつ、自分なりのルールを探っていた。

色相環と色の関係を考える

模様が形として立ち上がった後は、配色についても扱った。
色は感覚や好みだけで決めるものではなく、色相環における位置関係として捉えられることを、Webツール(Adobe Color-Wheel)を用いて視覚的に確認した。

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AdobeColorを用いた配色の検討
  • 類似色相が生み出す自然で落ち着いた印象
  • 離れた色相を組み合わせた強い印象
  • 明度や彩度の差によるバランス

こうした関係性を理解した上で、自分の模様にふさわしい色の組み合わせを考えていった。

お守りとしての缶バッジ

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高校生が制作した各自のオリジナル模様の缶バッジ

最終的には、各自が制作したイニシャルの文様を用いて缶バッジを制作した。
それは単なる作品ではなく、「自分で決めたルールから生まれた模様」を身につける、現代版のお守りとも言えるものになったのではないか。

古代の人々がパターンに託した秩序の感覚を、デジタルツールを通して追体験する。そのプロセス自体が、この授業の狙いである。

模様は、センスや才能の問題ではなく、ルールと観察の積み重ねから立ち上がるものである。
今回の授業が、ものづくりを「なんとなく」ではなく「考えながらつくる」きっかけになっていれば幸いである。