ゼミの活動

1960年代の雑誌に触れる──アートディレクションの原点と「紙のデザイン体験」


授業の一環で、1960年代に発行された海外雑誌を実際に手に取って見る機会を設けました。今回はスペイン語圏の雑誌を中心に、「HOLA!(1963年11月号)」「Dígame ROTATIVO GRÁFICO SEMANAL(1969年3月号)」「EL HOGAR Y LA MODA(1964年5月号)」などを閲覧。
どれも当時のファッションや生活文化、印刷デザインの最前線が詰まった貴重な資料です。

画像検索やデジタルアーカイブでは見落とされがちな、紙の大きさ、手触り、インクのにじみ、誌面の構成など、画面では伝わらない「物質としてのデザイン」に注目しながら観察を行いました。

DESTINO No.1575 1967 10月号

DTP以前の手仕事に宿る工夫

レイアウト、タイポグラフィ、写真とイラストの組み合わせなど、今日の編集デザインの原型となるような実験が行われ、アートディレクターという役割もこの時期に職能として確立されていきました。

DTPのない時代の誌面には、人の手で組まれた文字組や余白の妙、図版の配置が随所に見られます。
写真と手描きイラストの混在、写植文字の処理、手作業での見出し構成など、技術的な制約の中で試行錯誤を重ねたデザインの跡を観察することができました。

左「Dígame ROTATIVO GRÁFICO SEMANAL(1969年3月号)」右「EL HOGAR Y LA MODA(1964年5月号)」

商品ロゴやパッケージに見る時代感

誌面に登場する広告や製品紹介からは、当時のロゴタイプや配色、造形感覚の変遷を読み取ることができます。
家電や日用品のデザイン、キャッチコピーのトーン、写真の使い方にも、時代の空気感と生活文化の価値観が色濃く反映されており、現在との違いを比較する視点が育ちました。

左「Dígame ROTATIVO GRÁFICO SEMANAL(1969年3月号)」右「EL HOGAR Y LA MODA(1964年5月号)」
DESTINO No.1575 1967 10月号

紙であることの意味を実感する

今回の体験で最も印象的だったのは、紙媒体の持つ情報の厚みです。
手に取った瞬間の重みや素材感、インクの沈み、刷り色のズレ──それらすべてが、ビジュアル表現に与える影響の大きさを実感させてくれます。
画面上で「同じに見える」ものでも、紙によって印象がまったく異なることは、実物でしか得られない発見です。

DESTINO No.1575 1967 10月号

1960年代の雑誌は、単なる古書ではなく、デザインがどう社会や生活と関わってきたかを示す生きた資料です。
アートディレクターたちの創意工夫が刻まれたページをめくりながら、「見ること」「つくること」の原点に触れる貴重な体験となりました。