「白ごはんを比べて考える」──日常に潜むデザインの目を育てるワークショップ
NHK Eテレで2015年に放送された教育番組『デザインの梅干』。グラフィックデザイナーの佐藤卓さんがナビゲートするこの番組では、身近な題材を通して“デザインとは何か”を掘り下げて紹介していました。
その中で取り上げられた印象的なワークショップが、「白ごはんを食べ比べて考える」という体験型の試みです。
ゼミでは毎年このワークショップを実施しています。
3種類の白ごはんを同じ条件で炊いて食べ比べてみました
普段、白ごはんを“いつも同じ味”として意識することはあまりありません。けれどこのワークショップでは、複数の品種のごはんを一度に食べ比べてみることで、香り、粘り、甘さ、粒立ちといった多様な個性を体感することができます。
おかずなしで白ごはんだけを食べ比べること自体も新鮮な体験
味覚を鍛えることが目的ではなく、「違いに気づく目」を養うことがこのワークの本質です。つまり、日常の中で当たり前に感じているものに「じつは豊かな差異が存在する」ことを実感することで、デザインの基礎である“観察する力”や“見えない意味を読み取る力”が養われていくのです。
同じだと思っていた白ごはんの味が違うことを言葉にしてみると…
このようなアプローチは、デザインスキルの有無に関係なく、誰でも実践できるという点でも優れています。ただごはんをゆっくり味わい、気づきを言葉にして伝え合ってみると、それだけで、ものの見方が少し変わる──この体験が、デザインという営みをより身近にしてくれます。
日常を再発見する、比較型ワークショップのアイデア
この「白ごはんワーク」にヒントを得て、他にも日常的な素材を使った、感性を育てるワークショップを考えてみました。どれも“違いに気づく”構造を持っています。
1. 🧂 塩のテイスティングワーク
>- 食卓塩、精製塩、岩塩、天然塩、藻塩などを並べて、見た目・粒の大きさ・味・溶け方・余韻を比較します。→ 目的:素材や製法の違いに基づく多様性を体感する
2. 🫖 水の比較ワーク
- 水道水、ミネラルウォーター(硬水/軟水)、炭酸水などを飲み比べ。→ 目的:「無味」のはずのものに潜む違いを探る観察力を養う
3. 🧻 白色の観察ワーク
- コピー用紙、画用紙、和紙、トイレットペーパーなど、“白”に見えるさまざまな紙素材を比較。→ 目的:「白」という概念の中にある幅と奥行きを感じ取る
4. 🧺 香りの比較ワーク
- 洗剤や柔軟剤などの香りを嗅ぎ比べて印象を言語化。視覚情報なしで感覚がどう働くかを検討する。→ 目的:非視覚的要素のデザイン理解、記憶との接続性を探る
このような比較ワークは、単なる知識の習得ではなく、「気づく力」=観察力・批評力・感受性を養うことに主眼があります。身の回りにある当たり前のものを、デザインの目で見直してみる。それだけで、日常はぐっと豊かになります。
JUGEMテーマ:アート・デザイン